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2013年07月31日

今宵もあのバーで 「カリスマの男」1

最近の佐藤家はとても静かだ。
といっても安らかなのではない。
いるはずの妻と子どもがいない悲しく重苦しい静けさなのである。
こうなった原因は佐藤家の主人である小五郎にははっきりとわかっていた。
しかし彼にはまったく手の打ちようがなかったのである。

10ヶ月程前。
小五郎は、某大型電器店の生活家電の営業課長だった。
彼の営業成績は素晴らしく、全48店舗の中で12年連続トップに君臨していた。

しかし小五郎には、この輝かしい成績は最初から決まっていた事のように思えた。
「俺が生きている限り、トップは誰にも渡さない」
この揺るぎない自信には、彼なりの理由があった。
それは大学生の時、周りから「カリスマナンパ師」と賞賛されていたからである。

とにかく学生時代の彼はモテまくった。
いつも違う女性を連れて歩いているのを見ていた男子学生が集まって「小五郎先生研究会」なる非公認サークルを立ち上げたほどである。

カリスマ講師として招かれた小五郎は、30人程の会員を前にして得意気に“小五郎流ナンパ術”を語った。
もちろん無料ではない。「参加費一人二千円也」は、小五郎にとってとても楽チンで効率の良いバイトになった。

ふん。世の中なんてちょろいもんだな。
自分を成功者だと確信した彼は「カリスマナンパ師」の経験を生かすことができる就職先を探した。

それが、全国チェーンを展開する「ビック電化」だったのである。
スマートで端正なマスクの小五郎が長髪をかき上げる仕草に、女性店員なら誰もがドキッとした。

ある日店長に呼ばれて、不潔に見えるから髪を短く切ってこいと言われたが小五郎は断固拒否した。
その時店長に向かって言った「もし成績が二位に落ちたら、いつでも角刈りにしますよ」という台詞は、ビック電化では知らない人間はいないほどの名言になっている。

とにかく売りまくった。
彼の成績がダントツなのは、いつも客に最上級機種を売るからである。
「素敵なあなたに最も似合うのは、この炊飯器しかありません」
もちろんその台詞を口に出すことはなかったが、客にはきっとそう聞こえたのだろう。
多くの女性は、家電を買うのではなく、小五郎に接客されにきていた。
「佐藤さんいますか?」
来店前に、電話で小五郎の出勤を確認する客もいた程である。

カリスマナンパ師から、カリスマ営業マンへの転身は大成功を納め“一生安泰”を確信した小五郎は、常連客だった美女と30歳の時に結婚した。
二年後女の子が生まれ、誰もが羨むような幸せな結婚生活が続いていた。

携帯にあの電話が掛かってくるまでは・・・

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posted by 安達正純 at 06:12 | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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